錦心流琵琶について

今、琵琶楽で使用される楽器の種類には、楽琵琶、盲僧琵琶、平家琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶の5種類があります。

薩摩琵琶は、戦国時代に薩摩の名君島津忠良公が自作の教訓歌を中島常楽院の盲僧淵脇寿長院に作曲させて、武家の子弟の教育用に歌わせたのがその起源とされています。

そして薩摩琵琶には、薩摩正派、錦心流琵琶、錦琵琶、鶴田流の4つの流派があります。

私たち錦心流琵琶宗家の永田錦心(本名武雄)先生は、明治37年その薩摩琵琶の音色に魅せられ、肥後錦獅師に入門されましたが、すぐに師匠も驚く才能を発揮して、明治39年民族の持つ哀愁を取り入れた「錦心流琵琶」を創流し、宗家として自ら流派の発展と後進の育成にあたられました。
爾来、43歳で夭折される短い間に、琵琶界における錦心流の存在を確固たるものとして、全国で8千名の門下を擁する一代流派に育て上げられました。

流祖没後の錦心流は、錦心師の生前の意向もあり宗家制度を採らず、流派・一門の組織「一水会」を中心に少数の高弟(錦号者)の合議による「理事会」と都道府県単位による「支部」制度により維持運営が図られてきましたが、宗家制度を採らなかったことにより、錦心流を標榜しながらも一流一派の分立を生み出す要因にもなりました。それはまた一面では、流派多様性の活力源にもなっています。