【奥伝をいただいて】花輪菖水 

 「ほんまにのんびりやったな」それが昇伝の知らせとともに中野淀水先生に言われた言葉でした。「長く続けられる趣味を持ちたい」と教室の門を叩いた時、先生の「すぐやめるのは困る」というお言葉に「のんびりゆっくりやります」と答えてから10年が経ちました。
趣味にしたいものの条件として、「誰もが知っているけど、誰も知らないもの」「絶対に独学ではできないもの」「自分だけの楽器が欲しい」そして「自宅からも勤務先からも同じくらいの時間で通えるところ」でした。今思い返すとずいぶん欲張ったものです。
 そのようなことを考えていた頃、三十三間堂に行く機会があり、千体の千手観音像に圧倒されながら見ていると、最後のほうに「摩候羅(まごら)王」という琵琶を持った仏さまがいらっしゃいました。その姿が格好よかったので、「琵琶ってどんな楽器なのだろう」とインターネットで検索したところ、淀水会のホームページに行き当たり、淀水先生にめぐり合うことができました。
 奥伝はいただきましたが、果たして趣味と言えるほど楽しめているかと考えてみると、まだまだ「演奏をしている」というよりは、節や弾法を必死に追っかけているところです。
 最後になりましたが、気長にご指導してくださっている中野淀水先生、いつも「よかったよ」と優しくおっしゃってくださる頌水先生、ならびに「あの謡やってみたい」と思わせる演奏をされる先輩方、どんどん上手くなって、私を焦らせてくれる後輩の皆さんと、自由にさせてくれる家族、琵琶に会わせてくれた摩候羅王に心からお礼を申し上げます。これからものんびり続けていきたいと思います。